Forum Report

「NEC未来創造会議メンバーが考える2050年について聞いてみました」
第1回会議 レビュー②

7月6日に行われた「NEC未来創造会議2018」の第1回有識者会議では、テーマについて意見を交わす前に、ウォーミングアップとして「2050年に対する期待と懸念」を、参加した7名の皆さんに書き出していただきました。今から32年後、私たちの暮らしや社会はどうなっているのか。有識者たちがイメージする未来の輪郭をなぞります。

NEC未来創造会議メンバーの写真

2050年の社会や暮らしに対する
「期待すること」と「懸念すること」

藤沢 久美氏の写真

ソフィアバンク代表
藤沢 久美氏(ファシリテーター)

ファシリテーター・藤沢久美氏の呼びかけで、ひとりひとりにメモが配られます。このメモに書くのは、2050年の社会や暮らしに対して「期待すること」と「懸念すること」。サっと書き上げる人、じっくり考える人、7人7様です。それでは皆さんの回答を見てみましょう。

林 千晶氏の写真

[期待]
 ・3Kな仕事は劇的に減る
 ・自分のやりたいことがどんどんできる
[懸念]
 ・異なる価値観とぶつかる
 ・夢、やりたいことを見つけるのが大変

ロフトワーク代表取締役

林 千晶氏

AIやロボットの導入で働き方が変わることを期待する点として挙げた林 千晶氏は、懸念について次のように説明しています。
「何のために働くのかというときに、昔はシンプルに『食べるために働く』と答えることができました。でも、食べるために必要な労働はロボットやAIがやってくれるようになって、『さぁ、やりたいことをやってください』と言われたときに、夢ややりたいことを見つけるのは、案外難しいなということです。私は大学でも教えていますが、現在でさえ学生たちから『夢を見つけられない』という声を聞くことが多いので」

塩沼 亮潤氏の写真

[期待]
 ・みんな仲良く生きている
[懸念]
 ・みんな自分中心になっている

慈眼寺住職 大阿闍梨

塩沼 亮潤氏

慈眼寺住職である塩沼亮潤氏もまた、期待と懸念が表裏一体をなしているようです。これについて塩沼氏は、次のように語りました。
「AIやロボットといったテクノロジーは、今のところ人間の欲求を満たす方向に進化しているんですよね。しかし実際には、生きていれば嫌なこともたくさんある。そういう『嫌なこと』に視線を向けた開発や考え方が出てこないと、『自分が心地いい』とか『もっともっと自分だけが』という考え方に偏ってしまうのではないか。そうなっていくと非常に怖いなと思います」

羽生 善治氏の写真

[期待]
 ・全ての人の生活の安定
 ・多様性のある世界
[懸念]
 ・大きな格差の社会
 ・統計に支配される世界

将棋棋士

羽生 善治氏

羽生善治氏は、社会制度など2050年の暮らしに視点を向けます。
「みんなが同じ条件で暮らすことはないでしょうけど、衣食住など最低限のことが保障されているのは大事なことだと思います」
その一方で、懸念する格差と統計の支配については、次のように述べました。
「ただ、技術の進歩と今の社会の制度が結びついたときに、どうしても格差が広がる方向に行きやすい。それは“統計の支配”とも密接に関係していて、自分の意思で選んでいると言っても、全体から見れば、釣りがね型の正規分布できれいに『この人は一次産業に行って、この人は二次産業行って……』というふうに見えてくる社会は、あまりいい社会ではないのかなと思っています」

長谷 敏司氏の写真

[期待]
 ・インフラが賢くなって、できることの最低ラインが上がる
 ・できる人のできることは伸びる
[懸念]
 ・インフラが強い権力を持つことによって自由度が下がる
 ・ゆるやかに選択肢を失う

SF作家

長谷 敏司氏

インフラの向上に着目したのはSF作家の長谷敏司氏。懸念については、羽生氏の「統計に支配される世界」につながる問題定義になりそうです。
「基本的にデータで動いていくので、データを集めるプラットフォームやデータを処理するプラットフォームを持っている人に、創意工夫では勝てなくなる。今だと、ごく普通の生活者が身近な必要性から起業したりしますよね。それが例えば、データを集めて起業を自動化するといった話になると、本来あったはずの起業者のパイが簡単に奪われてしまう。そうなると、実際には残された選択肢が少なくなるんですね」

松村 圭一郎氏の写真

[期待]
 ・生命の連鎖が可視化できるようになれば
[懸念]
 ・人間の成長は進むのか

岡山大学文学部准教授

松村 圭一郎氏

ほかの参加者とは異なる視点で2050年を推測したのは、文化人類学が専門の松村圭一郎氏。
「私たちは、自分たち人間だけで社会を作っているとか、自分たちの力だけで生きているとか思いがちですが、実は見えない命の連係プレーがたくさんあって初めて私たちの生は可能になっています。例えば、見えない微生物がお腹の中で消化を助けてくれるから、おいしいものが食べられるわけです。かつては精霊や神秘的な力として表されていた命のつながりを近代社会は見えないようにしてきたと思うんです。それをもう一度見えるようにできたら、それは人間の社会というよりは、むしろ生命のつながり合いとしての社会をすごく豊かにするだろうと思います」

スプツニ子!氏の写真

[期待]
 ・「無駄」のバリューアップ
 ・MORE "TRUTH" UNCOVERED
[懸念]
 ・AIによるステレオタイプ格差の増長
 ・WHAT IS TRUTH?

アーティスト

スプツニ子!氏

最後まで考えながら書き込んでいたスプツニ子!氏は、私たちに身近なSNSを例に、次のように述べました。
「SNSなどの投稿を発端に事件が明らかになったり、これまで見えなかった真実が見えるようになり、拡散されるようになって、公平さが保たれるようになる可能性が見えてきています。逆に、フェイクニュースも話題になっていますが、いろいろな情報がインターネットに蔓延してしまうがために何が真実か見えづらくなるという現象も起きています。真実が見えるようになる側面と、情報が多すぎて真実が分からなくなるという二つの側面が、今見えてきていると思います」

江村 克己の写真

[期待]
 ・100歳が活躍
[懸念]
 ・格差の拡大

NECチーフテクノロジーオフィサー(CTO)

江村 克己

最後に、その頃100歳ぐらいになっているというNEC CTOの江村克己が考える2050年とは。
「本当に100歳の人が活躍している社会って、今からちゃんとデザインしておく必要がある。テクノロジーが寿命を延ばし、再生医療などが進むことで、確かにポテンシャルは上がります。しかし、社会システムはそれに全然追いついていないということを考えるべきだと思っています。ありたい姿としての100歳。私自身、2050年にはそのぐらいになっているわけですが、そのとき活躍していたいなということで挙げました」

「人の視点」と「社会の視点」
そこに「技術の進化」をどう取り込むかを考える

以上が、今回の会議の参加者が考える2050年の「期待すること」と「懸念すること」でした。いずれの回答も両方の答えが同じラインの対極にあることが見てとれます。また、ある時点まではプラスと考えられる状況が、一線を越えることでネガティブな要素に変わってしまう可能性についても、多くの方が言及しています。各人のこうした未来像を踏まえて、次のレポートでは討論の模様をレポートします。