Forum Report

第二部 パネルディスカッション②
「テクノロジーの進化は何をもたらすか」

今年の第3回となる「NEC未来創造会議 2018」のパネルディスカッションは、第1回、第2回のパネリストに加え、第1部で基調プレゼンテーションを行ったケヴィン・ケリー氏を迎えて行われました。今回は、NEC CTOの江村克己による活動報告、およびプレゼンテーションの内容を受けて、さまざまな意見やアイデアが交わされたディスカッションの前半部分をレポートします。

NEC未来創造会議メンバーの写真

第3回有識者会議参加メンバー

ソフィアバンク代表

藤沢 久美 氏

ファシリテーター

WIRED誌 創刊編集長

ケヴィン・ケリー 氏

EDGEof 共同創業者

ダニエル・
ゴールドマン 氏

慈眼寺住職 大阿闍梨

塩沼 亮潤 氏

将棋棋士

羽生 善治 氏

ロフトワーク 代表取締役

林 千晶 氏

NEC CTO

江村 克己

本当のイノベーションにとって
重要なのはプロセス

藤沢:
今日はたくさんの皆さんにお越しいただいて、大変ありがたく思っております。先ほど江村さんからお話がありましたように、この「NEC未来創造会議」は、2年にわたって開催され、延べ8回目の会議となります。この先NECはどこに向かっていくべきかということで、これまでの議論の内容を元に「人間」「社会」「環境」「未来」という4つの視点が示されました。そしてこのパネルディスカッションは、そこに向かうためにNECは何をしていくべきか、ということを公開で提案しようという試みです。
まず4つの視点を提示されたわけですが、このまとめについてどんなふうに感じられているのか、さらに、ここも考えなければならないのではないかなど、みなさんに伺っていきたいと思います。

林:
そうですね。1番目の「人間」に出てきた「エクスペリエンスネット」。人間が覚えていられることや知ることができる範囲は、限られていると思うんです。でもAIという世界中から集まったさまざまなデータ、あるいはいろいろな人の考えたことが合わさったときに、2つ期待していることがあります。
ひとつは、自分にどれだけバイアスがあったか、どれだけ狭い範囲のことしか知らなかったのかに気付くこと。いろいろな人が考えていることを知ることができる、その可能性。もうひとつは、本だけで得られる情報とネットが出てきて得られるようになった情報が全然違うように、VRが入ってきて知ることができる世界が飛躍的に広がったときに、活躍できる場所がどんどん広がっていくのかなと。そういう意味で、エクスペリエンスネットはすごく楽しみです。

ゴールドマン:
アメリカでは、大企業がこういった認識を持つことは非常に稀です。それを公開して人々の意見を聞くという姿勢は、もっと稀だと思います。そういった枠組みの素晴らしさと、それに伴うハートというか、意識というのはとても心強いと私は思いました。

ケリー:
この4つの視点は、とても良い選択だと思います。ただ、これらはどれも非常に重要というわけではなく、重要なのは今ここで始まったプロセスだと私は思っています。一巡、二巡したら、もしかしたらこの4つは変わるかもしれないけれど、実は変わってもいいんです。一番重要なことは、こういった問いかけをして答えを得るというプロセス、これが本当のイノベーションです。プロセス自体が鍵であり、重要なポイントだと思います。

江村:
ありがとうございます。いつも感じていることですが、現状にはいろいろな要因が入っていて、バイアスが入っているところから次を考えていくことになる。そこのプロセスデザインは、実はすごく難しいと思っています。

林:
目指しているものは「状態」ではないんだなと、今話を聞いていて思いました。動詞で捉えなければならないんですね。議論し続けて、ひとつの状態になるとまた新たな問題が生まれる、という中で、議論し続けるという「動詞」であることがすごく重要なことなのかなと。

藤沢:
この議論をし続けるためには、では、どんな組織を作っていったら良いんだろうという点についても、後ほど議論していただけたらと思います。

羽生:
人はひとりでは生きていけません。グループや組織や集団を作って生きていくというのは、どんなにテクノロジーが進んでも、時代が変わっても、普遍的なものであると思っています。一方で、人生100年の時代というときに、寿命が伸びた上に、その可能性も開かれたという意味では、今まで人が一生の中で経験してきたことの2倍、3倍ものさまざまな経験や体験ができる時代が近づいてきているんだなということも実感します。そこに向かって、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)も含むヴァーチャルの世界とリアルの世界を、つまり、ひとりの人間が2つの世界を同時に生きていくというのは、どういうことになるんだろうか。結構壮大な試みなのではないかなと思いました。

塩沼:
私が議論を通して感じたことは、技術を持つことによって、安全で効率的な社会を提案できたとしても、技術と人間との関係、我々がそれによって本当に安心で公平性を感じて、心豊かに生きていけるかどうかということ。これは、今後の課題になってくると思うので、技術と人間、その接点になるものは何かということをみんなでアイデアを出し合って、そしてより豊かに我々が生きていくためにどうしたら良いのか。そういうことを提案してくれるNECさんは、素晴らしく心強いなと思い、毎回この議論を楽しみにしております。

藤沢:
ありがとうございます。今ご提示いただいた、技術と人間は、江村さんのプレゼンテーションにもありましたね。技術のところで効率性を目指しながら、でも人間のほうで公平性を維持するとか、その間にあるものは何なんだろうと。そのひとつとして、ずっと我々が議論してきたのが、人工知能(AI)というものです。このAIを、NECが目指している4つの未来に向けて、どう開発をしていったら良いのか、その開発をするNECは、これからどんなふうに変わっていくのか。その辺りを江村さんからご提示いただいた上で、みんなで議論したいと思います。

「人」ファーストで
人間と技術の関係を考える

江村:
実は私たちが意識したのは、「人」を先に書いている点です。今の時代は人工知能をどうするのかという議論になることが多いと思うんです。でも、次の社会を作っていきたいと思ったときに、私たちがやりたいもの、私たちのあり方はこうだからそこにどう技術を使っていくかというふうに見方を変えていかないと、人間が追従する側に行きがちです。人間と技術の関係を問われたときに、「我々とは何か?」ということをベースに、もう一度考え直さなければならないのではないか。これはNECというよりも、私の思いなんですけれど。でもこれが、NEC未来創造会議でみなさんと議論している中で私が強く感じていることです。

藤沢:
もう少しそこのところを具体的に伺いたいです。「人工知能をどうする」ではなく、「人間、我々って何?」の部分ですね。NECとしては、それに対して具体的にどんなチャレンジをしていくのでしょうか?

江村:
例えば、工場のオペレーションの効率を上げるとか、そういうところでは人工知能が入ることで良くなっていますよね。それはそれでどんどんやっていけば良いと思いますし、NECとして、その部分でまだまだ皆さんに貢献できるところがたくさんあると思っています。
一方、次の世の中で言うと、例えば、スマートシティという議論があります。その議論には、技術だけでなく人が入ってくる。そのときの議論の仕方は、単純に効率を上げる工場のオペレーションとは違うパターンになってくるので、これをきちんと分けて、アプローチの仕方も変える。そういうことをやっていくのではないかと思います。

藤沢:
ありがとうございます。今までのものと新しいものに分けて、新しいものにどんどんチャレンジをしていく、そのチャレンジというのがみなさんの悩みでもあると思うのですが、ダニエルさん、NECが次にやっていくこと、人と技術を埋めるような役割を担うためには、何をしたら良いか、ご提案はありますか?

ゴールドマン:
例えば、NECが持っている技術や人材と、起業家たち、ソーシャルアントレプレナーと呼ばれる人たち、それからいろいろなことをやっている学生たちがいますよね。そうした人たちを一緒にするスペースを作っていただけたらと思います。クリエイティブな考え方ができる人、新しい発明やより多くの影響力を持つ人が集まれば、初めはどんな技術を持っているか、何が作れるかわからなくても、「場」を作ることで生まれてくるものはあると思います。

ケリー:
私は長年、新しい技術についての情報に目を通してきました。新しい発明が、ほとんど毎日AIの世界でもARの中でも起こっています。それを目にするたびに、私のアイデアが変わっていくんです。そして人間について考えます。人間というのはクリエイティブですよね。いやAIもクリエイティブだという人もいる。そこで、人間がより得意なことは何だろうか、と考えるわけです。そうですね、人間というのは何かを好きになること、愛することは得意だけれど、ロボットは愛に対してレスポンスを返すことができない。
そして、ひとつわかったことがあります。人は常に人と時間を過ごしたいものなのだということです。機械とではなく、人とです。機械がどれだけ面白くても、クリエイティブでも、やはり人は人を好むんです。時間を費やすときに、別の人と一緒に費やしたい。人が人と過ごす時間を最大限にできるようなテクノロジーさまざまな人々と時間が過ごせるようなツール、NECには、そういったものをぜひ発明してほしいと思います。

羽生:
技術の開発をしている人たちは、当然ながらグローバルな競争があるので、エッジの効いた、前にどんどん進んで行くという姿勢があると思うんです。でも、それを実際にリアルの世界で活用する人たちというのは、少なくとも最初はどう使って良いかわからないし、使い勝手が悪いこともある。そういう人たちにも優しいとか、ちょっと間違えてもちゃんと動いてくれるとか、止まって動かなくならないようにするとか、そういう部分をケアしてくれる、人間が使いやすいように新しいものを作り続けていくという視点は、大事なのではないかなと思っています。

塩沼:
先ほどのケリーさんの話は非常に興味深く感じました。人はどういうときに一番喜びを感じるかというと、例えば、目の前にいるひとりの人と心と心が通い合っている状態のときなんですね。私は、この議論に参加させていただいた当初は、正直AIについてあまり興味がありませんでした。しかし、知れば知るほど、もしかしたら、これは人と人とをつなぐ潤滑油になるのではないかと思うに至りました。例えば、人と人とがコミュニケーションを取るとき、言葉や表情、それに心が伴って初めて成立します。心にある愛なんです。ですから、AIと、我々人間が持つ人を思いやる愛というものが、そこでコンタクトをしたら、面白い世界、楽しい世界が実現できるなと。NECさんには、そういう世界を挑戦してみていただきたいなと思いました。

ケヴィン・ケリー氏の写真

「ひとつわかったことは、人は常に人と時間を過ごしたいものなのだということ。機械がどれだけ面白くても、クリエイティブでも、やはり人は人を好む。」

ケヴィン・ケリー氏

塩沼 亮潤氏の写真

「当初私は、正直、AIについてあまり興味がなかった。しかし、知れば知るほど、もしかしたら、これは人と人とをつなぐ潤滑油になるのではないかと思うに至った。」

塩沼 亮潤氏

林:
私がNECさんにぜひここは頑張ってほしいと思っているのは、主語が誰か、そこを明確にすること。なぜかというと、「人間」と言ってしまうと、まるでみんなが同じことを目指してるかのように聞こえますが、立場が違えば同じ人間でもぶつかってしまうことがあります。誰にとっての良いことなのか、ということ。主語が違うと解決策もまったく違ってくるし、そこで「AIが出した適切な解です」と言っても、それはブラックボックスになってしまう。誰のデータを元に、その判断をしているのかを開示していくこと。そこに人が変化を加えていけるような、人間がいつでも主語を決められて、データを読み解き直せる自由度というのが、私はすごく欲しいなと思うんです。

藤沢:
ありがとうございます。羽生さんが先ほどおっしゃったことも、今の林さんのお話と少しつながることがある気がします。「誰にでも」ではあるけれど、「ひとりひとり違うよね」という。そこにデータをどう投げ込んでいくか。羽生さんは今の林さんのお話を聞かれていかがですか?

羽生:
たくさんの人が暮らしていく中で、考え方が違ったり好みが違ったりということはありますよね。逆に言うと、AIのデータを使って不要な衝突を避けるとか、不必要な摩擦を避けるとか、その辺りのことはできるのではないかなと思います。それですべてが解決できるということではなくて、最終的には人間同士が信頼し合うとか、譲り合うとか、そういうものは残るのではないかと思っています。

藤沢:
江村さん、今みなさんから具体的なご提案をいただきました。この中で「これは絶対に掘り下げてみたい」「これは絶対にやってみたい」というものはありましたか?

江村:
正直言うと、全部やりたいですね。ケヴィンさんが言われた(人が人と過ごす)時間を作るというのが、最もわかりやすい。私が説明した、AIと人の特性、役割分担のようなものがあって、AIやロボットでとことん効率化を図っていくと、人が使える時間が増えてくる。そのデザインを一緒にやっていく必要があるのですが、どうしても効率化の部分にだけ議論がいってしまっている。そのときに、(第1回会議で)スプツニ子!さんが言った「無駄をすることによって新しいものが生まれる」というのが、次の世界を作っていくと思うんです。だからそこは、きちんと掘っていきたい。
次に、林さんのお話で、私たちは議論の中では「人」と「社会」「環境」と言っていて、人というのは個人を指していますが、社会となったときにまさに誰のことを言っているのか非常に曖昧です。しかも、その裏側にデータがあるので、データにバイアスがかかったままだと、場合によっては格差を加速してしまうといったことが起きてしまう。そういったときに、技術の問題はどうなっているのかという話になるんですけれど、使っているデータに関する説明責任、透明性みたいなことを一緒に考えていかなければならない時代になってきていると思います。「それは使う人の問題だ」と言っていてはダメだろうとは思っているので、どういうメンバーが何を議論しなければならないのかというのは、考えている部分です。
もうひとつ、プロジェクトのチームのメンバーが議論したときに、「意思駆動型デジタルツイン」というアイデアがありました。これは、人の意思をAIの中にどう入れ込んでいくかという議論で、それは、先ほどのAIと人の関係に戻ります。AIが答えを出すのではなく、いくつかの選択肢を提示したときに、主語が誰かによりますが、「自分たちはこれだよね」と人が決める。これが、AIの使い方のプロセスのひとつなのではないか。その辺りが次の議論かなと思っています。

羽生 善治氏の写真

「AIですべてが解決できるということではなく、最終的には人間同士が信頼し合うとか、譲り合うとか、そういうものは残るのではないか。」

羽生 善治氏

江村 克己の写真

「データにバイアスがかかったままだと、場合によっては格差を加速してしまうといったことが起きてしまう。使っているデータに関する説明責任や透明性についても一緒に考えていかなければならない時代になってきている。」

江村 克己

インテリジェンスが
人間を動かすすべてではない

藤沢:
ここまでいくつかの角度で、みなさんからご提案をいただきました。総じて言うと、どんなAIをNECが作っていくのか、どんな役目を持ったAIを作っていくのかという問いになっていくと思われます。常に「人間」という言葉を使われる塩沼さんにあらためて伺いたいのですが、どういったAIが必要であるとお考えですか?

塩沼:
人間には、知と感情と意識があります。その知、情、意でうまく回っているときは、良い状態だと思うんです。「知」の部分、人工知能はさまざまなものごとを効率良く動かしてくれると感じています。しかし、効率良く回っている間、果たして我々が公平性をいつも実感できるかというと、知が過ぎて自己中心的になり、他者を省みないということも考えられます。
また、「知」だけでは完全ではなく、感情も大切なんですけれども、人間には喜怒哀楽があります。また、一時的な感情の高まりで違う方向にも行きます。一番大切な部分は、意思決定する人間側にあるわけなんですよね。最終的な判断を下す人間の価値基準、そこが難しいところではないか。国や地域によって文化も考え方も宗教も違うわけです。この多様な国際社会の中で、どこを一定ラインの常識とするのか、自分の価値基準をどう捉えていくのかが、難しいと思います。

藤沢:
意思決定が人間に課されるということなんですが、羽生さんは常に将棋の世界で、自分の意思で選ぶ、情の部分もコントロールされていると思うんですけれど、これはAIに置き換わるのでしょうか?

羽生:
棋士として手を決めていく上で、ひとつひとつの選択が重たいということがあるんですね。では日常生活のすべての決断において、それと同じ比重でもって、こだわりを持ってやっていくというと、それはしんどすぎる。そういうところはAIに任せてもいいかなと。もちろん、完全に依存してしまうのは良くないと思いますが、任せられるところは任せてしまう。それで、その人が豊かに快適に暮らせるということであれば、そんなに悪い方法ではないのかなと思っています。

林:
昨日お話ししたときに、ケヴィンさんが「インテリジェンスに重きを置きすぎなんじゃないか」とおっしゃったのが、印象に残りました。今使っているコンピュータも、あらゆる電子ツールも、インテリジェンスという意味では、とっくに私たち人間を超えていて、その超えているものと共存している。インテリジェンスだけが社会を動かしているわけではなくて、むしろ感情だったり身体だったり、そういうものが人間の喜びや、好きだなというモチベーションの源になっているとしたら、思っているほどAIには、私たちの生活を動かすようなインパクトはないのかもしれない。インテリジェンスが人間を動かしているすべてではないということも、忘れてはいけないと思っています。

ゴールドマン:
私はAIに、子供に対して何をしてほしいか、自分に何をしてほしいかということを考えます。例えば、私は子供に対して「自分のやりたいことを自分でやりなさい。そして自分の価値観を持ちなさい」と教えたいと思っています。それとは別に、AIがメンターになったら良いなと思うんです。AIがほかのAIの助けになったり、人がなぜこういったことをするのかを教えてくれたり。深い感覚を持つ人間にとっては、それほど効率的なものではないかもしれません。でもハッピーなやり方で、私たちの人生を充実させてくれたら、そしてAIの可能性を良いほうに持っていけたら素晴らしいと思います。

林 千晶氏の写真

「今使っているコンピュータも、あらゆる電子ツールも、インテリジェンスという意味では、とっくに私たち人間を超えていて、その超えているものと共存している。インテリジェンスが人間を動かしているすべてではないということも、忘れてはいけない。」

林 千晶氏

ダニエル・ゴールドマン氏の写真

「深い感覚を持つ人間にとっては、それほど効率的なものではないかもしれない。でもハッピーなやり方で、私たちの人生を充実させてくれたら、そしてAIの可能性を良いほうに持っていけたら素晴らしい。」

ダニエル・ゴールドマン氏

藤沢:
皆さん「シムシティ」というシミュレーションゲームをご存じでしょうか? ダニエルさんは、そのシムシティを作ったおひとりでいらっしゃいます。今お話いただいたことは、人がAIを通じてプロセスを知る、そういうふうにも聞こえてきますが、そういった意味合いでよろしいのでしょうか?

ゴールドマン:
シミュレーションゲームは、この世界の仕組みがどうなっているのかがわかる、どこでも誰でも安全に学べるツールです。そして、AIも同じだと思います。AIを使うことによって世界のことが学べる。例えば、自分たちの非常に複雑な人生の中で、どうすれば幸福になれるのか、提案してもらう。それで、自分たちのための意思決定が自分でできれば良いと思います。

藤沢:
そういう意味では、これまで見えなかったいろいろなプロセスや、人の気持ちの変化の根拠のようなものをAIで見える化するということは、林さんがおっしゃった決断のための材料を与えてくれるのかもしれませんね。

林:
それに少し足しておくと、知性に重きを置きすぎてはいけないのと同じくらいに実は重要だと思うのは、人間に主体を置きすぎてもいけないということです。これがAIの弊害ではないかと思っています。要は何事も人間だけでやっているわけではない。人間から取れるシミュレーションのデータより何兆倍も豊かな自然の生態系の中で、私たちは生かされているわけです。
重要なことは、確かにデジタルツインで一部シミュレーションできても、お腹が空いたことも、この人良い人だなって思うかどうかも、ハグしたときの感覚も、微生物とかそういう存在も含めて、今生きている自然の5億年かけた最適化のシステムのすごさがあるという点。地球、他者、人間以外とともに生きているという視点は、すごく重要なのかなと思います。

藤沢:
ありがとうございます。

NEC CTO江村の活動報告を受けて、パネリストからはさまざまな提案が出されました。パネルディスカッション前半の中では、ケリー氏の議論し続けるプロセスが重要という言葉が印象に残りました。次回のディスカッション後半では、人と技術、テクノロジーを使って企業ができることなど、より具体的な議論が展開します。